診療放射線技師とはどんな職業か知っていますか?
病院でレントゲンやCT、MRIを撮影している人、というイメージでしょうか?
私も養成校である大学に入学するまで、それしか知りませんでした。
診療放射線技師の業務の中で一番知られていることは、「X線撮影」だと思います。
いわゆるレントゲン撮影です。
「スイッチ、ポンッ」だけだと思っている人もいるかもしれません。
なぜそのように思われるのでしょうか?
この記事では、診療放射線技師がX線撮影のときに裏でしていることをお伝えします。
これから診療放射線技師になろうと思っている方や病院でレントゲンを撮ったことのある方にとって有益な情報であると思います。
私は国立大学を卒業後、大学病院で10年以上勤務しています。そんな私の知識と経験を元に独自の意見でお伝えします。
患者にとっては一瞬の出来事
みなさん、X線撮影はうけたことがありますか?
大学や職場の健康診断で「胸部X線撮影」をうけたことがある人は多いと思います。
胸部X線撮影では上半身Tシャツ1枚になり、平らな機械に胸をつけて、「息を吸って、止めてください」いう合図に合わせて息を止めたら、もう撮影終了。
そのX線撮影をしているのが診療放射線技師なのですが、患者と接する時間はほんの少しだけしかありません。
患者からしたら診療放射線技師は「スイッチ、ポンッ」しかしていないよう思っているかもしてません。
中には、「えっ、もう終わりなの?」と少し不満げなことをいう方もいます。
X線撮影は、患者からすると一瞬の出来事なのです。
ベテランになればなるほど、患者に触れることもなく撮影を一瞬で終わらせることができるようになります。X線撮影はじっくり時間をかければ上手い画像が撮れるわけではありません。
なぜ一瞬で撮影が終わるのか
それは、診療放射線技師の技術進歩、放射線機器の技術進歩があるからです。
胸部X線撮影の撮影手順を例にあげると、
1.患者を呼び入れ、上半身をTシャツ1枚になるように更衣室へ案内する
2.着替えている間に、患者情報を撮影装置へ登録(入力)し、胸部X線撮影用のメニューを選択する(X線の量を調整しておく)
3.患者の着替えが終わったら撮影台まで来てもらい、整位する(装置をあごの位置に合わせる→あごを乗せて胸をつけてもらう→手を少し広げ肩を前に押し当てる→左右のズレや体のねじれを修正する)・・この間、約5秒程度
4.撮影する(スイッチ、ポンッ)
という流れで胸部X線撮影を行っています。
病院のよっては違う手順の場合もあります。
2の部分は放射線機器が進歩したおかげで、撮影する部位のオーダーを撮影装置に登録するだけで、撮影条件や画像処理が自動で設定されようになっています。
昔は、診療放射線技師の熟練した経験をもとに、患者ごとに撮影条件や画像処理を設定していましたが、いまはどんな患者や撮影部位でも、ほぼ自動で良い画像(画質)ができるようになりました。
このことから、時間が大幅に短縮されています。
なんでもかんでも全自動ではありません。患者ごとに撮影条件や画像処理は調整する必要があります。以前に比べると調整する幅(許容範囲)が広くなっている、ということです。
3の部分は診療放射線技師として熟練していけばいくほど速く正確になっていきます。
患者に触れることなく巧みなセリフのみで整位を終えることもできます。
そのため患者と接する時間が一瞬なのです。
以上より、診療放射線技師と放射線機器の技術進歩があるため、患者からすると一瞬の出来事のように感じるのです。
たかが胸部X線、されど胸部X線
X線撮影では、咳が出るなら「胸部」、腹痛であれば「腹部」、腕を骨折したら「上腕」「肘」、というように目的に合わせて「全身」どの部位でも撮影を行います。
その中でも群を抜いて1番多い部位が「胸部」なのです。
私の勤務する大学病院ではX線撮影の6~7割が胸部です。
整形外科のない病院や検診センターであれば、X線撮影のほとんどが「胸部」かと思います。
そのため、診療放射線技師としてX線撮影をするのであれば、かなりの数の胸部X線撮影をこなすことになります。
慣れすぎてしまうのです。
「あごの位置がこのくらいで、胸の位置がここで、手はここ、肩は前に、左右の位置、ねじれの有無、呼吸の合図が出ることを伝える、・・・」などと1つ1つ確認しながら患者の位置を整えることはなくなります。
すべて同時進行で行い、一種の「流れ作業」のようにできるようになります。
「流れ作業」とは例えであり、けして患者さんを物のようには扱ってはいません。
つまり、胸部X線撮影は「簡単」なのです。
飲食店で例えると「いらっしゃいませ~」くらいかもしれません。
結果、ほとんどの診療放射線技師が胸部X線撮影は一瞬で終えることができるのです。
では、なぜ胸部X線撮影はとても多いのでしょうか?
それは、とても大事な画像だからです。
胸部X線撮影は、肺炎や胸水、気胸などの呼吸器系、心肥大や胸部大動脈瘤、動脈硬化などの心臓・大血管系の生命に関わる疾患を発見するために簡便に行うことのできる重要な検査です。
呼吸器系や循環器系の疾患で入院中の患者であれば、毎日のように撮影し、微妙な変化を観察しなければならない人もいます。
そのため、診療放射線技師としては、ねじれや傾きがなく、必要な部分が描出されていて、高画質で再現性の高い画像を医師へ提供しなければなりません。
つまり、胸部X線撮影は簡単に行っていますがテキトーには行っていません。
簡単ではありますが、簡単ではないのです。
いかがでしたでしょうか?
診療放射線技師の業務は簡単で「ただのスイッチマン」だと思いますか?
今回は、1番わかりやすい胸部X線撮影にフォーカスして記事を作成しました。
X線撮影では胸部以外にも腹部や骨盤、肘、頭など全身のどの部位でも撮影することがあります。
その撮影のときの診療放射線技師の「実際」についてもまた紹介したいと思います。
最後までこの記事を読んでいただきありがとうございます。
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