肥満は糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を引き起こすリスクが高まります。
そのため病院へ行きさまざまな検査を受ける可能性が高まります。
検査の中には診療放射線技師が関わるものも多くあり、レントゲンやCT、MRIを行いますが、患者が肥満の場合には苦労することが多くあります。
診療放射線技師にとって患者が肥満であることがデメリットであることを紹介します。
X線量が多く必要
レントゲンやCTにおいてX線の量は患者(被写体)の体厚によって増減します。
X線画像を作るには、患者(被写体)を透過したあとのX線の量を、ある一定量にする必要があります。
被写体が硬ければ硬いほど、もしくは厚ければ厚いほど、X線は透過しにくくなります。
そのため、体厚が少ない場合(細い人や子ども)は少ないX線量でも足りますが、体厚が大きい場合(肥満患者)は多くのX線量が必要になります。
多くのX線量が必要ということは、被ばく線量が多くなるということです。
病院によっては「標準的なX線量」を掲示してありますが、肥満の場合はその値よりも被ばくが多いことを覚えておきましょう。
X線を照射する機器である「X線管」への負荷も多くなるため、機器の故障の原因になることもあります。
人手や力仕事が増える
肥満が原因で立つことが大変だったり、寝台に寝たり起き上がったりを自分自身でできない場合、介助することになります。
手術直後であれば、さらに介助が必要です。
介助にはかなりの力が必要であり、場合によっては2人3人と人手を増やさなければならないことがあります。
看護師さんや介護士さんもほんとうに苦労されているかと思います。
レントゲン撮影の中には、「ポータブルX線撮影」というものがあります。
移動型のX線撮影装置を病室に持って行き、病室内でレントゲン撮影するものです。
ポータブルX線撮影は、重症であったり、なんらかの制限があり、病室から出られない人に対して行う検査です。
その際、検出器である「レントゲンの板」(厚み1cm程度)を寝ている患者の背中に敷く必要があります。
そのため患者を横に傾けたり持ち上げたりしなければなりません。
患者が肥満な場合は、とても苦労します。
放射線技師1人で行う検査です。人手が必要なときは看護師さんにも手伝ってもらいます。
X線画像の画質が悪くなる
患者(被写体)にX線があたると、X線はいろんな方向に広がってしまいます。
患者の厚みが大きければ大きいほど、広がります。
広がったX線のことを、「散乱X線」と言います。
すると、X線画像は「ボケて」しまいます。
ボケた画像はとても見づらく、病気の見落としにも繋がります。
MRI装置に入れない
MRIは筒状の機械であり、その筒の中に入って撮影(撮像)します。
体が大きすぎると入れなくなくこともあります。
もし無理矢理入れたとしても、窮屈な状態で30分以上そのままでいなければいけないため、とてもしんどいと思います。
MRIを撮像するには筒の中に入るだけでなく、「コイル」という機器を撮像する範囲に取り付ける必要があります。
しかし、体が大きいと「コイル」を取り付けることができなくなります。
「コイル」がないと画質が低下してしまい、診断に影響が出る可能性があります。
まとめ
患者が肥満であると診療放射線技師にとってデメリットがいくつもあります。
我々診療放射線技師だけでなく、他の病院職種のかたも感じていることかと思います。
肥満は、病気になるリスクがとても多くなります。
生活習慣を見直して少しでも肥満な人が減ると嬉しいです。
肥満の人を批判しているわけではありません。肥満の場合、画像検査で病気を見つけられる可能性が下がるかもしれない、ということをお伝えしたかったのです。不快に思ったかたがいたら申し訳ありません。
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